自衛隊案内所に行ってきたよ!

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それは、高架の下にひっそりと立つ、雑居ビルの2階にあった。

「こんな近くに・・・」
男はそう呟きながら、ビルを見上げた。

半月ほど前、男は新宿の外れにある、地下の赤ちょうちんに居た。値段は安いが、ちゃんとした料理を出す店、そういう評判の店だった。380円のホッピーを手に壁に眼をやると、そこには不釣合いな大型の液晶テレビがあり、自衛隊の案内が延々と流れていた。往々にして赤ちょうちんには個性的な店が多いが、自衛隊の案内板は初めてだ。

「自衛隊ねぇ。」前から興味はあったが、深酒飲みなのと生来億劫なのが手伝って、なにもせずにいた。だが、そこで見つけた五反田の案内所は会社から歩いて5分程度。兵隊としての年齢制限は越えているが、予備役になら着ける。酒が回った頭の片隅に、案内所の場所を刻み込んだ。

国防の要とも言える兵隊の卵を案内するには、なんともさびしげな、というより悲しげなオーラが漂っている。自衛隊の存在意義が声高に叫ばれるこのご時勢では、極力目立たぬようにしているのでは、と深読みしてしまう。ビルの前にある色あせた看板が差すその先には、薄暗い階段が、あった。

頭の中ではこの曲がリフレインしていた。

♪自衛隊に入ろう入ろう入ろう
自衛隊に入ればこの世は天国
男の中の男はみんな
自衛隊に入って花と散る

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急な階段を上がり、古めかしい字が書かれたガラス戸をあけると、そこには煙草を吸っている男が居た。パンフレットを貰いにきたことを告げ終わらないうちに、3人に囲まれていた。

「さあさあさあ、こちらへどうぞ。」

案内されるがままに応接室へ。前に2人、後ろに1人。妙な重苦しさだ。
取調室にいるような緊張感の中、名刺を受け取った。「陸曹長」が言った。

「まずはこちらにお名前をどうぞ・・・」

(つづく)
※この話はフィクションです。

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